今回は足関節の靭帯について
内容をまとめていきます。
特に靭帯損傷の中にも多い
捻挫について注目していきたいと
思います。
捻挫の病態
捻挫は
「関節に生理的可動域を超えた外力が
強制されて起こる損傷の中で
解剖学的な乱れがない」
I度:靭帯部分断裂
Ⅱ度:靭帯部分断裂と関節包損傷
Ⅲ度:靭帯完全断裂と関節包損傷
と言われています。
炎症反応による機能障害
まず捻挫による足部周辺に炎症反応が生じ
その反応に準じて機能障害が出現する。
すなわち
浸出液や内出血により腫脹が生じ、
靭帯が伸張され
関節不安定星が生じる。
さらに炎症にて滑液の粘性が低下した
関節面に角の摩擦が生じ
スムーズな運動が阻害され
関節可動域制限につながると言われています。
靭帯損傷による関節不安定性
靭帯・関節包は主に膠原繊維からなりますが、
部位によっては弾性線維が混ざっており
外力に抵抗できるような構造になっています。
よって靭帯は関節に安定的な
要素をもたらしています。
関節弛緩を行うと、筋収縮を用いて
関節を安定させる必要が出てくる。
しかし足関節は、
靭帯、関節包にてその安定性を
獲得していますが、
捻挫に関して、
その安定性を十分に図れない
事になります。
固有受容機系機能繊維破綻による身体制御機能低下
靭帯にはゴルジ腱受容機とパチニ小体、
自由神経終末が存在し、
関節の位置と運動方向を検出します。
また、関節包にはルフィニ終末が存在し、
関節運動方向とその速さ、
関節に付着する筋の張力に
影響されて運動への抵抗の検出と
運動の調整。
足関節捻挫による靭帯損傷では、
神経繊維を損傷する可能性が高いと
言われています。
そのため、求心性の固有受容器感覚が
遮断、遅延し関節に対する
ストレスを感知できず適度な関節の位置を
保持できません。
また足関節捻挫を繰り返しする人は、
突発的な内反強制に対する
腓骨筋の反応時間が健常者よりも
遅延していたため、メカノレセプター
の損傷による関節固有受容器の
機能低下や神経ー筋機能の低下があります。
その結果、
足関節の不安定を助長し
身体制御機能の破綻を起こすことになります。
ここで関節受容器の分類の表を
復習しておきましょう。
Type1:ルフィニ小体
分布:関節包の繊維膜に分布
機能:関節の位置と運動を感知し、
運動の方向に反応する。
静止時、運動時の筋緊張を調節する。
Type2:パチニ小体
分泌:Type1と比べるとまばらに分布。
機能:早い適応。
関節の早い運動と振動、関節包の横方向の
ストレスに対応。
Type3:ゴルジ腱器官
分布:関節包周囲の靭帯や
関節内靭帯に分布
機能:遅い適応。
筋活動を反射的に抑制して、
関節に過剰なストレスが加わるのを防ぐ。
運動にブレーキをかける。
Type4:自由神経終末
分泌:関節包の繊維膜、靭帯、脂肪ヒダ、
周囲の血管、滑膜に分布。
機能:高閾値。
過剰な関節運動を感知
この4つに分けられます。
機能障害が姿勢制御能力低下に及ぼす影響
靭帯損傷に対してそれぞれの機能障害が
どの事項に起因しているかを
詳細に鑑別し
患者の現象を捉えることが重要です。
靭帯損傷が生じた場合
関節の安定化が低下し、
スムーズな関節運動が阻害されます。
また靭帯の解剖学的に
距腿関節の底・背屈および
内転、距骨下関節の回外の
制動が困難になります。
臨床上頻回に観察される現象として、
動作時に下腿の内旋により足圧が内側へ偏位し
上行性の運動連鎖において
損傷部位へのストレス軽減を
図ることもあります。
また足圧中心の内側移動は
距骨下関節外反、脛骨内旋と大腿骨内旋を
伴った下肢外反傾向による
骨盤前傾と体幹前方移動をもたらし、
身体重心の前方への移動が
起こりやすい身体環境になります。
身体重心の後方化は骨盤後傾、
大腿骨外旋と下腿の外旋を伴い
靭帯にストレスをかけます。
捻挫は歩行中や交通事故、
スポーツなどその受傷機転や
損傷部位の形態や程度は
様々です
足関節捻挫による
靭帯損傷の90%が外側側副靭帯の
損傷と言われています。
ここで外側側副靭帯のおさらいを
しましょう
外側側副靭帯とは?
引用画像:日本整形外科学会
外側側副靭帯といっても
靭帯の総称のことなんです。
前距腓靭帯
踵腓靭帯
後距腓靭帯の3つの靭帯の名前を
総称したものです。
外側側副靭帯の中でも、
1番損傷部位が多いのが
前距腓靭帯です。
損傷のメカニズムとして、
A:距骨の前方滑りにより前距腓靭帯(ATaFL)の緊張が生じる
B:距骨下関節の回外により踵腓靭帯が緊張する
C:Bの状態により、さらに距骨下関節が回外すると
前距腓靭帯が断裂する。
この時、踵腓靭帯は緊張する。
D:Cの状態により、外力が加わることで
踵腓靭帯は前内方に引かれ断裂し
後距腓靭帯が断裂する。
その際距骨は前方に勝つどす
ここからは前距腓靭帯の機能解剖について
まとめていきます。
前距腓靭帯の解剖
起始:腓骨前端、外果前縁
停止:距骨の外側
作用:底屈を制限
脛骨に対して距骨が前方にずれることを制限する
踵腓靭帯の機能解剖
起始:外果頂点
停止:踵骨外側
作用:内反を制限
後距腓靭帯
起始:外果の後内側
停止:距骨後突起の外側結節
作用:距骨を安定させる
足関節の背屈が出ると
過剰な外転は制限
基本的には靭帯の損傷が
多いですが、
そのほかに合併症として
軟骨損傷や筋損傷を
合併する可能性があるので
紹介しておきます。
軟骨損傷
足部の底屈、内転が強制された際に
距骨の内果と脛骨の内果関節面が
インピンジメントすることによって
生じます。
その際、距骨の軟骨損傷は
内側後方に生じると言われています。
よって軟骨前面の
プリテオグリカンが破壊され
スムーズな関節運動の阻害因子となる。
筋損傷
足部が過剰な内返しになると、
足根中足関節が屈曲、内転し
第3腓骨筋が伸張され損傷する場合もあります。
この筋損傷の場合、静的構造上の関節弛緩は
ありません。
捻挫に多い足部のアライメント
主に足部のアライメントは
大きく分けて3つあります。
回内足、正常足、回外足の3つに分類されます。
開帳足や回内足の原因は?ウインドラスの評価や足部の治療方法なども紹介!
捻挫の理学療法
靭帯の組織損傷の修復過程は
炎症期、増殖期、成熟期の3つに
分かれます。
時間的には
炎症期は受傷直後から72時間まで
増殖期は72時間からやく6週間まで
成熟期は約6週間から数カ月までと言われています。
その中で理学療法としては
疼痛による
足関節周囲筋の防御性収縮や
関節不安定性の代償作用として
働く筋収縮により
可動域制限が生じています。
まず、その疼痛を軽減した上で
非荷重位での
足関節の距骨下関節の可動性を改善を
目指しましょう。
その後、外反筋の強化を行い
内反方向への関節不安定性を
強化していきます。
足部外反モーメントを最も
発揮する筋肉として、
長・短腓骨筋があります。
鍛える方法として
バランスボード、セラバンド、タオルギャザーによる
外反筋の強化を受傷後6周まで
4〜5回/週で行い突発的な内反ストレスに
刺激に対する
長・短腓骨筋の反応速度が改善する
ケースが多いようです。
このことから外反筋の強化は
靭帯による内反制動機能の代償として
必要です。
しかし過度な外反筋の強化は
距骨下関節やショパール関節の外反を
伴い内側縦アーチや横アーチの低下を呈するため、
足圧の内側への偏位を助長しないような方法を
考える必要があります。
今回では足指を
屈曲した状態で足部外反運動を
非荷重から荷重位へ行う方法です。
これだと足指が屈曲することで
距骨下関節が回外位となり
アーチが上昇中します。
そのため距骨下関節の回内が行いにくい状態になり
強い長短腓骨筋の収縮が獲得できると
考えられます。
身体運動制御
足関節および距骨下関節の機能改善だけでなく、
それと連動して動く
股関節機能の再構築が必要になってきます。
いくら足部が柔軟にできても
股関節の大きい筋肉が安定していなかったら、
転倒リスクも大きくなります。
内反捻挫症例においては足部外側偏位に
伴う下腿の外旋や
身体後方の移動が困難となる。
その代償として、
下腿内旋位をとっているが、
これによる上行性の運動連鎖にて
股関節は内旋を強いられるため、
股関節外旋の可動性が低下していることが
多い。
この可動域を改善し
下腿の回旋に連動した股関節の回旋を、
非荷重位から荷重位への順で行っていく。
特に下腿外旋時に緊張すべき
前距腓・踵腓靭帯が損傷していることを
考えると股関節と連動させて
運動できるかが
重要になってきます。
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